印象派

愛知県立美術館で印象派展を見る。モネ、セザンヌの確立した印象派からスーラ、シニャックの新印象派、点描の技法の到達点としてモンドリアンの抽象に行き着く流れがよくわかった。中途で登場するゴッホは自身に繊細さを要求される点描の技法が馴染まず、その技法を独自に咀嚼しながら、大胆な筆感によってむしろフォービズムに近づいた。ゴッホの比類のないスタイルはやはりかっこいいし、同様のポジションにいるもう一人の画家はムンクなのか。印象派は視覚による世界の捉え方を革新したが、その流れがまた新たな捉え方を生み出す20世紀美術を用意したことが時系列に把握できる。ただし、宗教画を脱して身近な風景を芸術に捉えた印象派は市民社会の成立とパラレルであったが、社会的な弱者の立場から表現されたものは少なかった。美しい風景を美しく適切な色彩配分で絵画に表すことは人々の感情に暖かく響くが、製鉄所で 働く労働者の姿や街に佇む物乞いの姿をリアリズムに基づいて描写した印象派の数少ない政治性を持った作品のほうに、むしろ現代性を感じたことは確かだ。20世紀の芸術である映画を見る態度と似て、芸術作品にはそこに描きこまれた現実感を読み込む事が大切なのだと思う。19世紀と20世紀の芸術表現の差異を感じる展覧会でもあった。